転職活動をしていると、複数の企業から内定をもらったり、自分のイメージとのギャップがあったりして、もらった内定を辞退しなければならないことがあります。
しかし、「内定辞退はできない」「内定承諾書を書いた後に辞退したら賠償金が発生する」などと聞いたことはありませんか?
結論から言えば、内定辞退はいつでもできますし、内定承諾書を書いた後でも辞退は可能です。
本記事では、そもそも内定辞退とは何かといった基本から、内定辞退がいつでも可能と言い切れる法的根拠、内定辞退の方法を順番に論じていきます。
中には、「内定辞退はできない」という嘘を言ってくる悪質な転職エージェントもあります。悪質な転職エージェントが嘘をつく背景も解説します。
目次
各エージェントに「良い転職先があれば、すぐに転職したい」と伝え、優先的にサポートしてもらう。
担当者との相性を確認しながら本命のエージェントを1社に絞り、本格的な転職活動を開始する。
内定辞退はできる?まずは「内定」とは何かを理解しよう
「2020年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によれば、上場・非上場の別や業種にかかわらず、半数以上の53.1%の企業が「内定辞退率3割以上」と回答しています。
新卒市場では内定辞退は珍しいことではなく、中途採用でも状況は同じです。
とはいえ、企業より労働者の方が立場が弱いものです。本当にそんなに当たり前のように内定辞退はできるのでしょうか?
内定が辞退できる法的根拠は、主に以下の3つです。
- 日本国憲法22条1項による「職業選択の自由」
- 労働基準法5条による「強制労働の禁止」
- 民法627条の労働契約の解約
ここから、順を追って説明します。
内定辞退はできる?→YES|その法的理由
日本国憲法22条1項では、「職業選択の自由」を保障しています。
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」
憲法は民間の契約はもちろん、法律よりも上位に位置する「日本の大原則」です。もちろん、自らの職業選択に関わる内定を辞退する権利も憲法で保障されています。
次に、労働基準法5条では「強制労働の禁止」を定めています。
「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」
また、民法627条では「期間の定めのない雇用の解約の申入れ」として、以下のことを定めています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」
つまり、内定が出ても法的にはいつでも辞退可能です。
仮に内定を承諾(=雇用契約)が成立していたとしても、辞退(=解約)を申し出れば2週間で内定の法的効力は消滅します。
このことから、企業側は内定者からの辞退を拒否し、拘束することはできません。辞められない仕事、辞退できない内定は存在しないということです。
なお、仮に辞退しないことを合意する「内定承諾書」を締結していたとしても、労働者側に著しく不利な規定のため無効になります。
ただし、入社直前の辞退などは信義則に反し「解約権の濫用」と見なされる場合もあるので、辞退するなら早いほうに越したことはありません。
そもそも「内定」とは?
上の項目で、内定を雇用契約と同等のものとして解説しました。
内定は専門的には「始期付解約権留保付労働契約」と言われます。開始時期(=入社)が定められ、解約権(=解雇)に留保が付いた労働契約ということです。
つまり、就職希望者が内定を承諾すると、そこから労働契約が始まっていると解釈されます。
上記の通り、労働契約は退職日の2週間前までに申し出れば解約できます。これは内定でも同じことです。
内定承諾書とは?必ず書かされる?法的拘束力は?
内定承諾書とは、内定を出した人に対し、企業が入社を約束させるために作成する文書です。
上記で紹介した「2020年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」では、90.3%もの企業が内定承諾書の提出を求めています。
「内定をもらった段階なら辞退できるが、内定承諾書を書いてしまうと辞退できない」と思っている人がいますが、これは誤りです。
内定承諾書は労働契約ではなく、特別な法的拘束力はありません。
労働契約を結ぶ際は、労働契約の期間、就業場所、従事する業務、始業・就業時刻、残業の有無、休日、賃金、退職などの事項を明記した書面を交付しなければなりません。
内定承諾書にはそのような労働条件は書いておらず、特別な効力があるわけではありません。
あくまで、「入社をするつもりでいます」との意思表示をさせて、内定者に心理的プレッシャーを与えるものでしかありません。
企業が内定辞退を制限するのはアリ?辞退すると嫌がらせはある?
ここまで解説してきたとおり、企業側が仮に「内定承諾書」を書くよう求めてきて、内定者が書いたとしても内定辞退はできます。
ただし、承諾前後で比較すると、承諾後は雇用契約に準じる扱いになるため、企業側から反応がなければ解約までに2週間待つ必要があります。
一方、企業が内定者と契約書を結んで内定辞退をしないよう迫ってくるケースもあるようです。
しかし、先ほど述べたように、憲法で定められた「職業選択の自由」や労働基準法(強制労働の禁止)などに抵触する契約は無効です。
また、内定を辞退した人に、企業が嫌がらせや違約金・損害賠償の請求をすると脅してくるケースもあります。
これは脅しに過ぎません。損害賠償にしても、まだ働いてもいない「内定」の段階で、企業がどの程度損害を受けたのか客観的に証明するのは困難なためです。
嫌がらせをするケースも、ネット上の書き込みを見ると確かにあるようです。そういった企業はネットで「炎上」し、ブラック企業扱いされるので、評判を傷つけるだけです。
転職エージェントに「内定承諾後に辞退すると損害賠償を請求される」と言われたけど、大丈夫?
転職エージェントを使って転職活動し、内定を得た方の中には「内定承諾後に辞退すると損害賠償や違約金を請求される」と忠告された人もいるのではないでしょうか?
ここまで読んできた人ならお分かりかと思いますが、内定承諾後でも2週間の期間を置けば内定辞退は可能で、損害賠償も発生しません。
転職エージェントがこのように言ってくるのは、「担当者が勉強不足」か「転職エージェントの裏事情」が背景にあると思われます。
転職エージェントの裏事情とは、登録者が入社をすると成功報酬を受け取るという転職エージェントのビジネスモデルのことです。
つまり、内定を辞退されると報酬が一切入ってこないので、「損害賠償」などと脅して入社させようとするのです。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
【転職エージェントの裏事情】元キャリアコンサルタントが大暴露!「内定辞退」は転職エージェント経由がおすすめ!守るべき4つのマナーとは
転職エージェント経由で転職活動をしている人は、内定辞退も転職エージェント経由が原則です。自分で直接、応募先の企業に内定辞退を伝えてはいけません。
内定辞退を決めたら、転職エージェントの担当者にその旨を伝えてください。
しかし、転職エージェントを使わないで転職活動をした場合は、自分で内定辞退を企業に伝えるしかありません。
どのようにすれば、角が立たず、トラブルなく辞退を伝えられるでしょうか?ここでは、内定辞退の際に知っておきたい4つのマナーをご紹介します。
内定辞退のマナー①内定辞退を決めたらすぐに連絡する
内定辞退で大切なのは、伝えるタイミングです。内定辞退を決めたら、すぐに転職エージェントの担当者(または企業側)に連絡をとってください。
言い出しにくい人もいるかもしれませんが、内定辞退を伝えるのがギリギリになるのは良くありません。
内定辞退を伝えるのが遅くなると、企業や転職エージェントに迷惑をかけることになってしまうからです。場合によっては、「解約権の濫用」と判断されてしまいます。
きちんと内定辞退の理由を説明すれば、企業も転職エージェントも納得してくれます。
自分の将来を考えた上での決断です。早めに内定辞退の意思を伝えて、スムーズに次の転職活動に専念できるようにしましょう。
内定辞退のマナー②メールは必ず・電話も併用する
内定辞退を伝える方法について、メールと電話の両方で連絡をすることをおすすめします。なぜなら、それぞれに以下の特徴があるからです。
メール
すぐに担当者に連絡が取りやすく、送信履歴と内容が相手の手元に残ります。一方で、相手がメールを読んでくれたかは確認できません。
電話
担当者と直接話せるので、確実に内定辞退の旨を伝えられます。さらに、実際に相手と話すので、メールよりもお礼とお詫びの気持ちが伝わりやすいです。
基本的には、まずメールで内定辞退の連絡を入れ、時間を置いて電話でも連絡しましょう。少しでも早く、そして確実に内定辞退の旨を伝えることができます。
すぐにでも内定辞退を伝えた方が良い場合は、まずは電話で連絡し、担当者が不在の場合はメールでフォローすると良いでしょう。
内定辞退のメール例文(転職エージェント経由の場合)
以下にメールの例文を載せておきます。メール作成の参考にしてください。
件名:内定辞退のお詫び (あなたの名前)
(転職エージェントの会社名) ○○様
いつもお世話になっております。(あなたの名前)です。
この度、△△株式会社から内定を頂いた件について、誠に勝手ではございますが、辞退をさせて頂きたくご連絡いたしました。
○○様にお力添え頂いたにも関わらず、内定を辞退する結果となり、大変申し訳ございません。
辞退の理由は…(内定辞退の理由を具体的に書きましょう)
お手数をおかけし大変恐縮ですが、○○株式会社のご担当者様へ辞退の旨をお伝え頂けますでしょうか。
引き続き転職活動は継続していこうと思っておりますので、後ほど電話にて詳細をご相談させて頂ければと思います。
今後とも、何卒サポートのほどよろしくお願い申し上げます。
(あなたの名前)
内定辞退のメール例文(企業に直接送る場合)
件名:内定辞退のお詫び (あなたの名前)
(内定先の会社名) ○○様
いつもお世話になっております。(あなたの名前)です。
この度、貴社から内定をいただきました件について、誠に勝手ではございますが、一身上の都合で辞退をさせて頂きたくご連絡いたしました。
お時間を割いていただいたにも関わらず、辞退する結果となり、大変申し訳ございません。
その理由は…(簡潔でOK)
ご理解いただけますと幸いです。重ねておわび申し上げます。
(あなたの名前)
内定辞退のマナー③辞退理由を丁寧に説明する
内定辞退の連絡をする時は、内定辞退をする旨を確実に伝えつつ、転職エージェントや企業側にその理由を具体的に説明することも大切です。
特に転職エージェントに経由の転職活動の場合、内定辞退の理由を明確に伝われば、次からより自分の条件に合った求人を紹介してもらえます。
「条件が合わなかったから」だけではなく、雇用形態や給与、業務内容など、どこが自分の希望と合わなかったのかをしっかり伝えるようにしてください。
より最適な就職先を見つけるためにも、転職エージェントとのすり合わせが必要不可欠です。
企業に直接伝える場合は「一身上の都合」など簡潔で大丈夫です。詳しく伝えすぎると角が立つこともあるので、やんわり伝える自信がない場合は詳しく書きすぎないようにしましょう。
内定辞退のマナー④内定承諾後の辞退は避ける
内定承諾後も辞退は問題なくできる、と上記で解説しました。とはいえ、内定を辞退するなら早いほうに越したことはありません。
内定を承諾した時点で、企業はあなたを迎え入れる準備を始めます。内定承諾後の辞退は企業に大きな負担をかける結果になりかねません。
転職エージェント経由の転職活動では「転職エージェントの裏事情」で解説したとおり、内定承諾後の辞退は転職エージェントとの関係を悪化させる可能性もあります。
利用者と転職エージェントの信頼関係だけなく、転職エージェントと企業の信頼関係も損なわれます。できるだけ迷惑をかけないように辞退しましょう。
入社直前に辞退しなければいけない場合は
内定承諾後の辞退は避けるべきだとお話しましたが、中には、やむを得ない事情で入社前辞退をしなければいけない場合もあります。
そんな時は、以下の点に気をつけて入社前辞退の連絡を入れましょう。
- 辞退の連絡は、遅くとも入社日の2週間前までに済ませる
- メールと電話でお詫びをしっかりと伝える
- 転職エージェントと応募先企業の両方にお詫びの連絡を入れる
仕方ない状況であったとしても、入社前日や入社当日の辞退は絶対に避けるべきです。法的に内定辞退が問題ない2週間前までに必ず連絡しましょう。
民法の規定では「労働契約の解約は申出から2週間後」とされているので、入社日の2週間以内に辞退を申し出ると、入社後すぐの退職という扱いになるかもしれません。
入社前辞退では必ず、メールと電話で連絡します。応募企業と転職エージェントを使っていたらエージェントにも、お詫びの電話をしておくことをおすすめします。
言葉遣いにも注意し、誠心誠意対応することが大切です。
入社前辞退で損害賠償される可能性はある?
入社前辞退をすることによって、損害賠償を請求されるのではないかと心配な方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、入社前辞退も内定と同様、法的には問題ありません。企業から損害賠償を請求されるリスクはほとんどありません。
そもそも内定辞退しなくても良いスケジューリングが一番重要!
ここまで内定辞退について、法的な扱いと辞退を伝える際のマナーをお伝えしましたが、できれば内定辞退をせずに就職活動を進めたいものです。
そのためには、応募する企業の志望順位を明確にし、書類提出や面接のタイミングを決める必要があります。
志望順位を転職エージェントに伝えておけば、それに合わせたサポートを受けることができ、担当者も志望度の高い企業の選考を優先してセッティングしてくれます。
転職エージェントに相談しながら、内定のタイミングが入社したい優先順位と同じになるよう調整しましょう。
転職エージェントに内定辞退を伝える際のよくある質問|引き留めがしつこい?
転職エージェントを経由して内定辞退を伝える場合、「引き留めがしつこいのでは?」と不安になる方も少なくありません。
実際に、転職エージェントの担当者の中には強く引き留めてくる人もいます。しかし、その引き留めに拘束力はなく、求職者には転職先を選ぶ権利があります。
引き留めには以下のように対応しましょう。
転職エージェントの引き留めがしつこい場合は?
担当者からの引き留めがしつこい場合には、担当者の変更ができます。あなたの希望を優先してくれないようでは、今後の転職活動に支障をきたしかねません。
言いにくいことではありますが、担当者にメールで依頼することが可能です。これまでのサポートに対するお礼は忘れず、担当者の変更がしたい旨を伝えましょう。
「担当者の変更はなかなか言いづらい」「現在利用している転職エージェントのサービス自体に満足していない」
そんな方は、現在の転職エージェントを退会し、新しい転職エージェントに登録するのもおすすめです。
しつこい引き留めのせいで転職エージェントとの関係が悪化してしまい、転職活動が失敗するようなことがあってはいけません。
きっぱりと引き留めを断り、新しい転職エージェントを探しましょう。
内定辞退を取り消したい(入社したい)場合は?
覚えておかなければならないのは、「基本的に内定辞退の取り消しは認められない」ことです。「やっぱり働かせて」とお願いしても、一般的には受け入れられません。
もちろん、内定辞退の取り消しを受け入れて入社させてくれる企業もありますが、大変稀なケースです。企業側からすると気持ちの良い申し出ではありません。
内定辞退の取り消しを認めてもらえるのは採用枠が空いており、かつ高評価で内定をもらっている場合などです。それでも、「優柔不断な人」というレッテルをはられるリスクがあります。
どうしても内定辞退を取り消したい場合は、マイナスの評価を受ける可能性を理解した上で、誠意を持って働きたい気持ちを伝えましょう。
転職エージェントに内定辞退を伝えた後は
転職エージェントの担当者に内定辞退を伝えたら、今度こそ自分に合った転職先を見つけたいところです。
すでに本命の企業から内定をもらっている方は問題ありません。これから探す方は、自分が仕事に求める条件や本当にやりたいことを再度見直す必要があります。
現在登録している転職エージェントの求人やサポートに満足していない方は、新しい転職エージェントを利用してみるのも良いでしょう。
転職エージェントにはそれぞれの特徴がありますので、複数の転職エージェントに登録するのもおすすめです。
ここからは、それぞれ特徴の異なる3つの転職エージェントをご紹介します。あなたの条件や目的に合わせて、上手く活用してください。
おすすめの転職エージェント①パソナキャリア
パソナキャリアは、求職者に寄り添った親身なサポートが人気の転職エージェントです。
求人数は他社と比べて少なめですが、求人の質が高いという特徴があります。
丁寧なサポートと求人の質は高く、オリコンが行った調査で2019年・2020年で総合第1位を獲得したほどです。
パソナキャリアでは、求人の紹介だけではなく、職務経歴書の書き方や面接対策などの転職ノウハウもしっかり教えてくれます。
さらに、パソナキャリアは独自に手に入れた企業情報や企業の口コミ情報を持っているので、「選考が進んだら思っていたのと違った」といったギャップを防げます。
年収交渉など企業に直接言いにくいことも代わりに伝えてくれ、内定後の退職サポートも充実しています。
パソナキャリアの公式サイトパソナキャリアの評判と口コミについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。 パソナキャリアの評判は?629人の口コミ調査の結果おすすめの転職エージェント②リクルートエージェント
サポート実績と求人数で選ぶのであれば、リクルートエージェントは外せません。これまで40万人以上の転職支援をしてきたリクルートエージェントは、求人数が業界トップクラスです。
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リクルートエージェントの公式サイトリクルートエージェントの評判と口コミについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。 リクルートエージェントは評判が悪い?500人の口コミ調査の結果おすすめの転職エージェント③ランスタッド
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ランスタッドの公式サイトランスタッドの評判と口コミについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。 ランスタッドの評判は?500人の口コミ調査の結果転職エージェントへの内定辞退はしっかり伝えてスッキリしよう
この記事では、内定辞退はそもそもできるのか、内定辞退をする際の注意点などを順を追って解説しました。
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内定辞退を決めたら、すぐに伝え、すっきりした気持ちで就職活動を再開しましょう。