看護師として働こうか迷っている方の中には「大きな病院と、小さな病院、どちらで働いたらいいの?」と思っている方もいるのではないでしょうか。結論から言うと、それぞれにメリットとデメリットがあります。今回は看護師だった私がそのメリットとデメリットについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
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大学病院などの大きな病院で働くメリットやデメリットって?
まず最初に、大学病院などの大きな病院で働くメリットやデメリットについてご紹介します。
大学病院などの大きな病院で働くメリット
大きな病院で働くメリットとしては大きく2つあります。
1.教育システムが確立されている
私は新卒で、ある大学病院の病棟に入職したのですが、入職者全体のオリエンテーションや、各部署でのオリエンテーション、病院の機能やシステム、看護体制など、とにかくいろいろな説明がありました。そして一人ひとりの看護師が自己成長できるようなサポートシステムが手厚く用意されていました。ここではその内容について具体的にお話します。
まず、入職した看護師には、一人ひとりに「プリセプター」という指導の先輩看護師がついてくれます。日勤や夜勤を一緒に勤務して業務について教えてくれたり、その病院は受け持ち制の看護システムでしたので、受け持ち患者さんとのこと、日々の看護業務のことを相談したりできました。
また看護技術表というチェック表を基に、例えば尿道留置カテーテルの挿入などの各項目に対し、「見学した・実践した・独り立ちできる」と評価を行い、自分に不足している項目を達成できるよう取り組めるようになっていました。
その表は自分だけでなく、プリセプターや師長、他先輩方も見られるようになっていたので、自分に不足している看護技術が病棟であれば、周りからも声をかけてもらえる環境にありました。そして看護協会で制定しているクリニカルラダーシステムを導入していたので、自分の現在の技術を評価し、目標を立て、達成のための日々の行動を明確にして取り組む、というサイクルを一年間で数回行っていました。
毎日仕事に追われていると、日々の業務で手一杯になってしまいますが、このシステムのおかげで必然的に自身を評価し、自己研さんを促すことができます。
また認定看護師や専門看護師による、専門的な看護技術についての勉強会が開催されたり、外部の製薬会社による新薬や病棟で日常的に用いられている重要な薬(麻薬や抗がん剤等)の講習会が開催されたりと、病院側で看護師が学びやすい環境を整えてくれていました。
学生の間に看護について勉強したとは言え、実践的な現場での看護となると日々学ぶことは多くあります。独学で学ぶという手もありますが、勤務先が看護師の教育に力を入れ、サポートシステムを確立してくれているということは、大きなメリットといえると思います。
2.より高度で専門的な技術を学ぶことができる
勤務していた大学病院は、特定機能病院の認定を受けていました。そのため、通常提供することが難しい診療やそれに伴う技術が求められ、先進医療へも積極的に取り組んでいました。
患者さんの病態によって病棟は振り分けられていますが、重大な合併症を抱えていたり、全身状態がいつ急に変化したりするかもしれない患者さんが多くいましたので、全身状態のアセスメントと判断、的確な看護技術が求められていました。治験も多く行われていたので、世界で初めての治療法、なんていうのも時折ありました。
そのような高度な診療に伴う技術を学ぶことができるのは、大きなメリットでした。
大学病院などの大きな病院で働くデメリット
働くデメリットとしては大きく1つです。
1.他職種との交流が少ない
大学病院には様々な職種があり、私が勤務していた病棟では、看護師の他に看護助手、医療事務、必要な機材等を運ぶ方々などがいました。電子カルテで管理していましたので、患者さんの情報はカルテ上で医師や薬剤師、理学療法士、MSWなど様々な職種の方々と共有していましたが、直接その方たちと交流することはあまりありませんでした。
医療の現場で働いているとよくわかると思うのですが、「文章ではうまく伝えられない」「伝えるほどでもないけれど話したい」というような患者さんとの出来事はありませんか?
例えば、普段はリハビリに乗り気ではない患者さんがいたのですが、ある日、リハビリ中に、笑顔があったときがありました。その患者さんに『どうしたんですか?』聞くと、『遠方の家族がこれからお見舞いに来てくれる予定だから楽しみなんです』と教えてくれたことがありました。
そういう患者さんのちょっとした変化は、なかなか電子カルテに詳細に記載するわけにもいかないですし、でも残しておくとなると、「いつもより意欲的にリハビリに取り組まれていた」という、少し堅苦しい表現になってしまうのです。
直接、看護師と理学療法士が交流できる時間が少しでもあれば、患者さんから聞いた話を詳しく共有でき、看護師が「その患者さんにご家族が来る前にシャワー浴をすすめようか」、「午後に時間のかかるケアはやめようか」など、患者さんに寄り添ったケアの予定を立てやすくなります。
病院全体で行われる研修や勉強会で顔を合わせたり、グループワークをしたりすることはあっても、日々の業務の中で他職種と気軽に顔を合わせる環境ではなかったので、それは少し残念な点だと思います。
地方や小規模病院で働くメリットやデメリットって?
では続いて、地方や小規模病院で働くメリットやデメリットについてご紹介します。
地方や小規模病院で働くメリット
小規模な病院で働くメリットは大きく2つあります。
1.患者さんに長く向き合うことができる
私が勤務していた地方の病院では、近隣には他に病院がなく、その地域に住んでいる方たちの多くが来院していました。片道1時間かけて来院する方もたくさんいて、幅広い年齢層・病態の患者さんたちがいました。主に内科に通院している方が多く、高血圧や糖尿病、喘息など慢性疾患の方たちが多かったです。
そういった方たちは長い人ですと何十年もその病院に通院しています。大学病院ですと、入院期間が短かったり、外来通院していても病状が安定すれば地域のかかりつけの病院へ紹介されることが多かったりして、なかなか一人の患者さんと向き合う時間は限られてしまいますが、地域の病院や小規模の病院では長く患者さん一人ひとりと向き合うことができます。
看護師が患者さんの病歴や病状、家族背景を理解し、長くその方と向き合うことで、その患者さんへの理解が深まり、より個別性のある看護を提供できると思います。
2.皆がチームで働いているという意識を持てる
私が以前働いていた地方の病院では、外来の看護師が処置室や検査室、診療室、はたまた救急部も担当していました。その日によっては外来が急激に混み合ったり、搬送が必要な救急外来の患者さんが来たりとまちまちでした。
師長が中心となり各部署の状況を把握し、人手が足りないところにはヘルプで行き、補い合う体制でした。各部署で看護師が分けられていないことでの大変さもありましたが、圧倒的な人手不足の中で看護を行うためには、チームで働いているという意識をもち、皆で協力していかなければならないと痛感しました。
その分、お互いの忙しさに目を向け、自発的に協力していこうとする姿勢になり、看護師同士の連携がとれていたと思います。
地方や小規模病院で働くデメリット
小規模な病院で働くデメリットとしては、大きく3つあります。
1.人手不足のため、看護師が他職種の役割も担うことがある
小規模病院であれば、そもそもの職員数が限られていますし、休まる暇もなくあっという間に一日が過ぎ去った、というような日もありますよね。先述しましたが、地方の病院というのは、とにかく人手不足のことが多いように思います。看護師の人数だけでなく、他の専門的な技術職の人数も少なく、また急な退職により欠員、その後補充の見込みがない、なんて話もよく聞きます。
実際私が以前勤務していた地方の病院では、看護師が、欠員となった他専門職の役割も行っていました。具体的には放射線技師がいる時間が限られていたので、早朝や夜間、土日は看護師が全て対応していました。例えば、レントゲンを撮影するとなると、一人で動けない方であれば看護師数人で体の位置を調整し、医師を呼んで撮影のボタンを押してもらう、というような流れでした。
仕方がないといえば仕方がないことですが、放射線技師としての必要な知識も技術もない看護師がその業務を行い、その時間は本来行うべき看護業務がストップしてしまうという状況が生まれます。また一度そのような業務体制をとってしまうと、とめどなく次々と看護師の役割は増えていくと思います。
それは一人ひとりの看護師の負担が増えるだけでなく、患者さんの安全や看護の質の面での問題につながります。
人手不足である環境は地域や病院の役割など、様々な要因で仕方がない、と考えるしかないのかもしれませんが、そこで働く看護師にとっては負担が大きく、デメリットであると思います。
2.休暇など取りにくい
ある程度の職員数がある病院では、急に欠勤者が出たとしても、管理職者や他職種のヘルプがあったり、有給休暇を取得しても十分余裕のある人数であったりしますよね。ですが、職員数の限られる病院や人手不足の中でなんとか日々の業務を回しているような病院では、一人欠勤者が出た場合、残りの人数でいつもの業務を回さなければならない状況になります。
自身や家族の急病で仕方がなく、というような日であれば、お互い様ですし仕方がないことです。ですが、例えば夏季休暇や有給休暇の取得は、かなり難しい状況になるのではないでしょうか。
私が勤めていた地方の病院では、そのような休暇の名目はあっても、取得できている人は、ほぼいませんでした。たとえ2〜3日でも、一人職員が減るだけで業務は回らなくなると皆が感じていたからだと思います。
その環境に長くいると、それが当たり前と感じることもあると思いますが、一度離れてみるとその労働環境は職員にとって、とても負担の大きいものです。人手不足が解消されないのであれば、そもそも病院自体をお休みにするなどして、職員の労働環境も整えてほしかったと、今になって思います。
3.なかなか自己成長が難しい
先述した大学病院では、教育システムが確立されており、看護師一人ひとりの自己啓発、自己成長を促していました。しかしそのような教育システムがない場合、なかなか看護師の知識や技術の向上というところには目を向けられないというのが現状だと思います。
また看護師本人も、日々の業務で手一杯なのだと思います。そして来院する患者さんたちも、何十年も通院し続けている慢性期の病態であったり、風邪やちょっとした怪我であったり、高度の医療技術が求められる病状ではないことから、自身の知識不足を感じる場面も少ないのだと思います。
私も同様で、地方の病院で数年勤務していましたが、その間に新しい医療技術が必要となったことはほぼなく、自発的に学習する機会もほとんどありませんでした。そのような環境でも自己啓発できる意識・意欲を持ち続けられる人もいるとは思いますが、環境の与える要因というのも大きいと感じます。
最後に
最後に、上記のポイントをまとめたいと思います。
大学病院などの大きな病院 | 高度で専門的な医療技術を学ぶことができ、教育システムの確立により看護師一人ひとりが自己成長できる環境がある。しかし他職種との交流があまりなく、病院全体の中での看護師の役割を認識する機会が少ない。 |
地方や小規模な病院 | チームで働く意識を持ち、患者さん一人ひとりと向き合う環境があるが、人手不足により看護師の業務負担が大きい。また看護師自身の自己成長につながる機会が少ない。 |
いかがだったでしょうか?
私の体験談が、少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。