看護師は主に医療機関などで、医師のサポートや患者のケアを行う仕事です。
看護師と類似する職種に「准看護師」(准看)があります。准看護師と区別するために、看護師を「正看護師」と呼ぶことがあります。
准看護師と正看護師は別の資格で、可能な業務範囲に違いがあります。給料や働き方にも違いがあるのでしょうか。
最初から正看護師を目指すこともできますが、准看護師から正看護師になる方法もあります。そのために必要なステップや、気を付けるべきポイントも紹介していきます。
目次
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准看護師から正看護師になるには?通信制は大変?
最初から正看護師を目指すのと、准看護師から正看護師を目指す場合の違いは何でしょうか。
看護師資格を取るには、高等学校卒業後に大学や専門学校に進学する必要があり、看護師として働き始めるまでに時間がかかります。准看護師は中学校卒業後に養成所に通えば、資格が取得できます。
准看護師になれば働きながら正看護師の資格取得を目指すことが可能で、ここでは准看護師から正看護師になる方法を紹介します。通信制で資格取得する場合の注意点もまとめています。
准看護師から正看護師になる方法とメリット・デメリット
准看護師から正看護師になるステップは大きく分けると、①養成課程を修了する②看護師国家試験に合格するの2段階です。
養成課程にはいくつかのコースがあり、それぞれのメリット・デメリット、学費や学費補助制度、通信教育を利用した資格取得の方法をまとめました。
准看護師から正看護師になるステップ①養成課程を修了する
准看護師が正看護師の資格を取るには、看護師学校養成所2年課程を修了することが最初の条件です。養成課程には、全日制、定時制(昼間・夜間)、通信制の3コースがあります。
全日制 | 定時制(昼間) | 定時制(夜間) | 通信制 | |
必要年数 | 2年 | 3年 | 3年 | 2年 |
受験資格 | 准看護師資格を有すること (ただし中卒の場合、実務経験3年以上) | 准看護師資格を有すること (ただし実務経験7年以上) | ||
メリット | 2年で修了できる | 勤務を続けながら通える | 授業料が安く、2年で修了できる | |
デメリット | 勤務を続けながら通うことが難しい | 実習を含め3年かかる | 7年の実務経験が必要 |
各コースに必要な年数は、全日制と通信制が2年、定時制は3年です。
受験資格を得るのに必要な実務経験は、中卒で全日・定時制を利用する場合3年、通信制は7年です。実務経験の年数は、就業場所や勤務形態(常勤・非常勤、パート)を問わず、准看護師として勤務した年数を指します。
全日制の場合は2年間で資格取得できますが、勤務との両立が難しい点がデメリットです。定時制は勤務と両立できる一方、期間は3年と長くなります。
通信制は最も仕事と両立しやすいものの、実務経験が7年必要な点に注意が必要です。
准看護師が通う学校の学費は?
准看護師が養成課程の学校に通うのに必要な学費は以下の通りです。
- 入学金(10~30万円※通学の場合)
- 授業料(60~80万円×年数分)
- 教科書代(10~13万円)
- 実習費や施設維持費(20~30万円)など
学校・日程により料金は異なりますが、合計150万円~280万円ほど費用がかかります。
通信制は通学の場合より安く、授業料は年間30~40万円のため、合計100~120万円ほどで済みます。
准看護師が学校に通うのに補助されるお金はある?
准看護師が養成課程で学ぶ際に、給付金や奨学金の制度を利用できます。
給付金は、厚生労働省の専門実践教育訓練給付制度や母子家庭・父子家庭自立支援給付金事業があります。いずれも条件を満たせば、教育費の50~60%が給付される制度です。
専門実践教育訓練給付制度は、雇用保険に3年以上(初回は2年以上)加入していることなどが受給要件です。母子家庭・父子家庭自立支援給付金事業は母子・父子家庭が対象です。
奨学金は、日本学生支援機構奨学金や、各都道府県の修学資金制度があります通信制の場合、これとは別に日本看護協会が支給する奨学金もあります。
こんなところでも正看護師資格が取れる!
准看護師から正看護師になる方法には、看護師学校養成所2年課程に2~3年間通う必要があることを紹介しました。
通信制で正看護師資格を取得するために、養成所と併せて通信教育を活用する方法もあります。
准看護師の通信教育におすすめ:放送大学
通信制で正看護師を目指す場合、放送大学を利用できます。ただし放送大学の受講だけでは、全単位は取得はできません。
看護師学校養成所2年課程(通信制)で看護師資格を取得するには、必要単位数は65単位以上です。このうち放送大学では最大32単位までを卒業単位に算入できます。
放送大学での単位取得は、養成課程に進学する前に取得することも可能です。
注意点は2点あり、以下の通りです。
- 養成所の学費に加えて放送大学の学費が必要で、約20万円かかる(在籍年数や取得単位数により異なる)。
- 看護師学校養成所2年課程(通信制)の卒業単位に認定されるかは各養成所によって異なり、事前に確認が必要です。
准看護師はユーキャンのような通信教育でも資格が取れる?
ユーキャンなどの通信教育では「看護助手」の資格を取得できますが、准看護師の資格は取得できません。看護助手と准看護師は異なる資格です。
看護助手と准看護師の違いは、注射や点滴などの医療行為をできるかどうかです。看護助手は医療行為は扱えず、書類作成などの事務作業などの業務を担います。
准看護師になるには、専門の教育機関に進学して、各都道府県で開催される准看護師試験に合格しなければなりません。
准看護師から正看護師になるステップ②看護師国家試験に合格する
養成課程の2年間(定時制は3年間)を修了すると、看護師国家試験の受験資格が得られます。看護師国家試験は毎年2月に、指定された都道府県の各会場で実施されます。
試験内容は、看護師として必要最低限の基礎知識を問うものです。試験問題は必須問題、一般問題、状況設定問題に分けられます。
合格基準は厚生労働省が発表しており、問題ごとに基準は異なります。
必須問題は毎年50点中40点以上の正解が求められます。一般問題と状況設定問題は合格基準が毎年変動し、2019年度の第109回は250点中155点以上でした。
看護師学校養成所2年課程全体の試験合格率は90%ほどです。
准看護師から正看護師になると何が変わる?仕事内容や給料は?
准看護師から正看護師になるには、養成課程を修了して看護師国家試験に合格することが条件だとわかりました。
准看護師は都道府県知事が認定する資格で、正看護師は厚生労働大臣が認定する国家資格である点が、大きな違いです。
資格が異なると、准看護師と正看護師の間で仕事の内容や給料にも違いがあるのでしょうか。
准看護師と正看護師の仕事内容の違い
准看護師と正看護師の業務の範囲に違いはありません。
いずれも、血圧・体温・脈拍測定、医師の診察補助に加え、医師の指導の下で注射・点滴などの医療行為を行います。食事・入浴介助など、病気や障害のある人の療養も担います。
ただし責任の範囲に違いがあり、看護師は保健師助産師看護師法第五条で、傷病者や出産後の女性に対する療養上の世話や診療の補助を業務とする者とされています。
一方、准看護師は同法第六条で、「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者」とされています。
つまり、准看護師は医師や歯科医師、看護師の指示がなければ業務遂行はできません。准看護師は自らの判断で業務を行うことができず、医師や看護師の指示を受けた範囲で活動します。
准看護師と正看護師の給料の違い
准看護師と正看護師には、平均年収に違いがあります。
厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査によると、それぞれの平均収入は以下の通りです。
- 准看護師:月収28.2万円+賞与64.6万円=平均年収403万円
- 正看護師:月収33.2万円+賞与82.7万円=平均年収481.1万円
正看護師と准看護師には年間78.1万円の年収差があります。
ただし、この平均年収は同じ年齢・勤務年数で比較しておらず、准看護師は47.8歳、11.3年で、正看護師は39歳、8年です。
正看護師の方が、平均年齢・勤続年数が低い上に年収が高いのです。同年齢で平均年収を比べると、正看護師の方がさらに年収は高いでしょう。
准看護師から正看護師を目指した志望動機は?合格者の声と使える例文集
給与面や自ら判断で業務ができるかどうかなどが、准看護師と正看護師の違いです。
ここからは、実際に准看護師から正看護師を目指す人の志望動機を紹介します。正看護師として転職する際に使える志望動機の例文も挙げるので参考にしてください。
准看護師から正看護師の志望動機①「准看護師のくせに」と言われた
准看護師は「職場でひどい扱いを受けた」などの声を聞きます。例えば正看護師や患者から「准看護師のくせに」など、差別的な言葉を向けられることがあります。
https://twitter.com/chacha____chan/status/1263812075991621632
昨夜は患者さんと言い争いになった。超多忙でギスギスしているといろんな人から聞く中規模の病院で勤めていた方。「准看護師のくせに」とまで言われた(笑)。厚労省の配置基準が適切ならこの方は発症しなかったかも知れないのに。
— tetsutaro (@oniontharada) May 2, 2020
このような差別的な言葉を直接言われなくても、馬鹿にされているとの噂を家族などから聞いて正看護師を目指すケースもあります。
准看護師って正看護師からバカにされるって本当なのかな
正直私は准看護師がいいって思ってるのに親戚の看護師してる人は准看護師は絶対やめたほうがいい、ならないでって言われたんだけど。
准看護師なら働きながら学べるのにな— 裏naなmi (@uranaami15) March 18, 2020
このように、准看護師の扱いの悪さから、正看護師を目指すことが志望動機が1つです。
准看護師から正看護師の志望動機②准看護師の待遇が悪い
正看護師に比べて准看護師の待遇が悪いことも志望動機の1つで、准看護師をそもそも採用していない病院もあります。
https://twitter.com/eE7Dt4Wtz1YgMFu/status/1263740489049624578
地域や病院ごとに差はありますが、准看護師が待遇面で正看護師よりも劣る病院もあります。
https://twitter.com/pbgiB5DL7809ejI/status/1263666509999509504
平均年収も准看護師は403万円、正看護師は481.1万円で、78.1万円も差があります。
同じ業務を行っているのに待遇が違う、採用している病院がすくないことも正看護師を目指す理由の1つです。
准看護師から正看護師の志望動機③やりがい、キャリアアップを求めて
准看護師よりもキャリアアップに繫がるのを理由に、正看護師を志望する例もあります。
准看護師では配属される部署が限られ、希望の診療科や病院に行けないことがあり、仕事の範囲を広げるために正看護師を目指すのです。
https://twitter.com/NsGamers01/status/1263734875141468162
看護師資格を取得すると、保健師や助産師などの資格も取得できるようになります。
https://twitter.com/mtt2020/status/1187181041749913600
正看護師には、より責任の大きな仕事が任されるため、やりがいを求めて正看護師を目指す人もいます。
報告
准看護師試験合格しました!
毎日辛かったけどなんとか1発で取れました!家族、友達、職場の方本当にありがとうございました!皆さんのサポートのおかげです!
あと2年学校に通って正看護師になります!そして、いつかはドクターヘリに乗ってたくさんの命を救います!ゆーき
— ゆーき (@ZiFPmGVR1fjDAA5) March 16, 2020
責任とやりがい、キャリアアップを目指す人が正看護師になろうと考えるようです。
准看護師から正看護師に!転職で使える志望動機例文
志望動機を書く際は、抽象的な内容は避けて具体的に書くことが前提です。
准看護師から正看護師になる場合、准看護師時代の勤務経験をアピールできます。准看護師として培った経験とスキルは存分に志望動機に書き込みましょう。
志望動機に盛り込む際は、自分の経験やスキルが具体的に生かせるポイントを示さなければなりません。
そのためには、転職先の得意分野や重点診療科などの情報を十分に調べる必要があります。職場のニーズと自分のスキルが一致していることを示す必要があるわけです。
以下に志望動機例文を示しました。
これまで外科病院で准看護師として勤務しながら、定時制コースで勉強し、正看護師の資格を取得しました。准看護師として5年間勤務し、正確で丁寧な看護に努めてきました。今後はICUで、より専門性や迅速性が求められる医療に携わりたいと考えています。
貴院では集中治療専門医がご活躍であり、私自身も専門性を磨きながら、長く勤めたいと思い志望いたしました。
准看護師から正看護師を「目指さない」道もある?
これまで准看護師から正看護師を目指す方法やメリットを紹介してきました。一方、正看護師を目指さない選択肢もあり得るのでしょうか。
准看護師ならではのメリットや、正看護師以外の道について紹介します。
准看護師ならではのメリット
准看護師ならではのメリットもいくつかあります。特に准看護師は介護現場で頼りにされ、准看護師がやりがいを得られる職場の一つです。
准看護師は医療行為を扱えるため、介護施設が頻繁に求人を出しています。超高齢化社会を迎える日本では、介護現場で看護技術を持つ職員の需要が高まっているのです。
介護施設では急な入院対応などがなく、定時で帰れることが多いため、仕事とプライベートの両立もしやすいです。産休・育休明けの勤務や、子育てとの両立がしやすいのはメリットの1つです。
このほか、正看護師に転職した場合、准看護師の時よりも給料が下がることがあります。正看護師として就職すると、それまでの准看護師の経験年数がカウントされない病院があるからです。
経験年数の長い准看護師は、正看護師よりも給料が高い場合があり、准看護師のままでいる選択肢もあります。
待遇や職場環境が不満な時、正看護師を目指す前に考えるべきこと
准看護師から正看護師になることは、「良い給与や待遇が受けられる」「差別的な扱いを受けずに済む」など、メリットばかりに見えます。
一方で、正看護師になるには、お金をかけて看護師学校養成所に通い、国家試験に合格する2段階のハードルがあります。
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ここまで、准看護師から正看護師を目指すためのステップや、それぞれの業務や待遇の違いなどを紹介してきました。
ここでは、准看護師の人が自分のキャリアを考える時に、よく出る疑問をまとめました。准看護師資格の今後、認定看護師の資格、おすすめの学校の3つを解説します。
准看護師は今後廃止になる?
日本看護協会は准看護師制度の廃止を要望していますが、まだ検討の段階です。
准看護師制度はもともと、戦後の看護師不足に対応するためにつくられた暫定的な制度です。医療が高度になった現代では、看護師にも高度な専門性が求められるようになりました。
以上の理由から、日本看護協会は准看護師制度の廃止を希望しています。一方、看護師不足に悩む日本医師会は、廃止に反対意見書を国に出しています。
厚生労働省は、看護師養成制度の統合を目指しています。動きは地方が先行しており、神奈川県は2013年度に准看護師の養成を廃止し、准看護師の養成校は減少傾向にあります。
准看護師から正看護師になる要件も緩和されています。今すぐ准看護師制度が廃止になるわけではありませんが、養成制度は今後見直されるでしょう。
准看護師でも認定看護師になれる?
准看護師から認定看護師になることはできません。
認定看護師とは、特定の看護分野で技術や知識を持つことを認められた看護師です。看護師の指導者として現場を引っ張っていく役割も担います。
認定看護師は21の分野(2020年度から19分野)に分かれ、「緩和ケア」や「認知症看護」「手術看護」などがあり、認定にはそれぞれに特化した高い技術が必要です。
認定看護師になるメリットには、自らの経験やスキルをアピールできるなどのやりがいのほか、資格に応じた手当を付けている病院もあり、昇給の可能性もあります。
認定看護師になるためには、保健師、助産師、看護師いずれかの免許と、5年間の実務経験が必要です。その上で決められた教育課程と認定審査を合格した人が、認定看護師になれます。
2020年度から新たな認定看護師制度の教育が始まりますが、准看護師から認定看護師になれないことは変わりません。
准看護師におすすめの学校は?(全日制・定時制・通信制)
全日制・定時制・通信制のいずれが良いかは、就業経験の長さに左右されます。
通信制は学費が通学より安く、どこに住んでいても受講可能なうえ、勤務と両立しやすいメリットがあります。ただし、実務経験7年以上が必要です。
全日制・定時制の学校は数が少なく、各都道府県に全日制は0~6か所、定時制は0~9か所程度のみで、しかも年々減少しています。
費用を抑え、7年以上の経験もあるなら、通信制がおすすめです。
勤務年数7年未満で准看護師として勤務中の人は、勤務の調整をしながら定時制に通うことが多いです。定時制は修了まで3年かかるので、早く正看護師資格を取得したい人には全日制をおすすめします。
准看護師から正看護師を目指す前に転職のプロに相談するのがおすすめ
この記事では、准看護師から正看護師になる方法、働き方や給料の違いを検証してきました。仕事内容に大きな違いはないものの、給料は正看護師の方が高いことがわかりました。
正看護師を目指す理由には、給料など待遇の違いに加え、採用している病院が少ないことや職場での立場の低さなどがありました。
准看護師が待遇や職場環境を改善したい場合、まず転職エージェントに相談することをおすすめします。
准看護師が正看護師になるためには、養成課程で2年間(定時制は3年間)勉強し、看護師国家試験に合格しなければならず、時間がかかります。
看護師専門の転職エージェントに相談すれば、希望の条件に合った准看護師の求人が見つかります。
早く待遇を改善したいなら、今回紹介した転職エージェントを活用して自分に合った職場を見つけてください。正看護師を目指すのは、それからでも遅くありません。